憲政史上初の事態、前大統領が特検へ
大韓民国の政治史にまた一つ、衝撃的な場面が刻まれた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が20日、夫人の金建希(キム・ゴンヒ)氏を巡る各種不正疑惑に関連し、特別検察官(特検)チームの召喚調査を受けた。現職を退いて間もなくフォトラインに立った前職大統領の姿に、国民は複雑な心境と怒りを同時に感じている。今回の召喚は単なる調査ではない。「聖域なき捜査」を叫んできた彼が、いざ自分に向けられた刃の前でどのような姿を見せるのか、全国民の注目が集まった「世紀の尋問」であった。
ミン・ジュンギ特別検察官率いる特検チームはこの日午前、尹前大統領を被疑者として召喚し、金夫人のブランドバッグ収受疑惑、ドイツモーターズ株価操作介入疑惑、そして最近浮上した世論調査費用の不法代納疑惑などについて、8時間を超える高強度の調査を行った。調査を終えて出てきた尹前大統領の表情は硬く、取材陣の相次ぐ質問には沈黙を貫いた。
金建希夫人、「賄賂」の沼に落ちるか?
今回の捜査の核心は断然、金建希夫人だ。特検は、金夫人がチェ・ジェヨン牧師から受け取ったディオールバッグなどの高級プレゼントが、単なる贈り物ではなく、職務に関連した「賄賂」である可能性に重きを置いている。特に衝撃的なのは、金夫人が公認介入疑惑の中心人物であるミョン・テギュン氏から、3億ウォン相当の世論調査データを無償で提供されたという疑惑だ。
特検関係者は「単にバッグ一つを受け取った問題ではない。国政運営に深く介入しようとした情況、そしてその過程で行き来した闇金の正体を明らかにすることが今回の捜査の本質だ」と強調した。もしこれら全ての疑惑が事実と明らかになった場合、尹前大統領もやはり「包括的収賄罪」の共犯として処罰を免れることは難しいと見られる。法曹界の一部からは「弾劾事由を超えた重大犯罪」という激昂した反応まで出ている。
8時間の真実攻防、何が行き交ったか
取調室内部では張り詰めた緊張感が漂っていたと伝えられる。尹前大統領側の弁護団は全ての容疑を全面的に否認し、「政治報復捜査だ」と強く反発した。金夫人が受け取ったプレゼントは「大統領記録物として保管中」であり、世論調査費用代納疑惑もまた「全く知らなかった事実」という既存の立場を繰り返した。
しかし特検は既に相当な物証を確保したと知られている。ミョン・テギュン氏の携帯電話の録取録、チェ・ジェヨン牧師が提出した映像証拠などは、尹前大統領側の解明を色あせさせている。特に2021年の大統領選挙当時、尹候補が金夫人の虚偽経歴疑惑について嘘の解明をしたという容疑(公職選挙法違反)についても集中的な追及が行われた。嘘の上に嘘を重ねた結果が、結局ブーメランとなって戻ってきたわけだ。
国民の怒り、「法の前に平等であれ」
ソウル中央地検前には早朝から尹前大統領の支持者たちと拘束を促す市民団体会員たちが入り乱れ、阿修羅場と化した。「政治弾圧を中断せよ」という怒号と「犯罪者ユン・ソクヨルを拘束せよ」という叫び声が交錯する中、大多数の市民は冷ややかな反応を見せた。
会社員のキム某氏(42)は「検察総長出身の大統領が、それも『公正』と『常識』を掲げた人が、夫人の不正疑惑で捜査を受けるということ自体がコメディだ」とし、「特検が今回こそ権力の顔色をうかがわず、まともな刀を振るわなければならない」と声を高めた。
一難去ってまた一難、今後の展望は?
今回の召喚調査は終わりではなく始まりだ。特検は尹前大統領に対する調査内容を分析した後、近いうちに金建希夫人に対する召喚通知も行う予定だ。現職大統領の夫人ではなく、「民間人」の身分となった金夫人が検察のフォトラインに立つ日も遠くない。
政界の後遺症も激しい。野党は「事必帰正(物事は必ず正しきに帰する)」とし徹底的な捜査を促し、与党内でも「払拭すべきものは払拭しなければならない」という自省の声が出ている。しかし一部の強硬支持層の反発と政治的思惑が絡み合い、大韓民国は再び激しい国論分裂の渦の中に陥っている。
果たして特検は「生きている権力」ではないものの、依然として強大な影響力を持つ前職大統領夫婦の不正疑惑を一つ一つ暴くことができるだろうか?それとも今回も「竜頭蛇尾」で終わるのか?国民の視線は今、特検の切っ先、そして金建希夫人の口に向けられている。真実は決して沈まない。私たちはその真実が水面に浮かび上がる瞬間を目撃することになるだろう。
深層分析:なぜ今なのか?
専門家たちは、今回の特検捜査が単に過去のことを掘り起こすものではないと口を揃える。これは大韓民国の権力構造の慢性的な弊害、すなわち「帝王的大統領制」と「配偶者の非公式実力者化」の問題に正面から触れる事件だ。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾以降も変わらなかった帝王的権力の影が、尹錫悦政権でも間違いなく垂れ込めていたことを示す証左である。
ある政治評論家は「尹錫悦政権の失敗は予見されたことだった」とし、「検察権力を私有化し、配偶者の国政介入を放置した結果が今日の悲劇を招いた」と分析した。彼は「今回の捜査を契機に、大統領配偶者に対する法的地位と監視装置を制度化しなければならない」と指摘した。
経済に及ぼす波紋
政治的不安定は経済にも悪影響を及ぼしている。「コリア・ディスカウント」の主な原因の一つであるオーナーリスクが、国家レベルで発生しているわけだ。外国人投資家たちは韓国の政治状況を注視し、投資決定を先送りしている。
経済専門家のパク某教授は「前職大統領捜査という大型悪材料が市場の不確実性を高めている」とし、「一日も早く真実が究明され政局が安定してこそ、経済も再び活力を取り戻すことができるだろう」と懸念した。
結論:歴史は繰り返されるか
私たちは歴史を通じて学ばなければ、その歴史を繰り返すという格言を忘れてはならない。全斗煥、盧泰愚、李明博、朴槿恵…そして尹錫悦。不幸な大統領の歴史がいつまで繰り返されなければならないのか。今回の特検捜査が断罪を超え、大韓民国政治の根本的な改革のための狼煙(のろし)となることを切に願う。国民はこれ以上「悪い大統領」を望んでいない。
(記事は随時更新予定)